初めてのルアー釣り






中学生になると、クラスにブラックバス釣りをするという人物が現れた。
そのころは既に雑誌Basserも隔月間誌として発行されており、アメリカの有名バスプロが日本の釣り番組に出たりもしていた。

僕も興味が無かったわけではないが、家に車がない身としては、釣り場への交通手段が確保できないので、 自分には無理と諦めていた。

しかし学校で何度もその友人と話をするにつれ、どうしてもやってみたくなった。


誕生日だったと思うが、バスタックルを親にねだって買ってもらうと、「電車でも行ける」という4駅先の公園の池に その友人と釣りにいった。

友人いわく「釣れへんと思うけど、そういうもんやから」とのこと。
その友人自身、始めて2年程は釣れなかったと。


僕はそれでもいいと思った。

そのときはブラックバスという魚は特別な存在で、実物を見たこともなかったし、僕としてはプラグがヒョロヒョロ泳いでいる姿を見ているだけでも結構楽しかった。
(風呂で泳がせたりしていた)

当時のバスルアーというと海外製のものが主流で、ダイワをはじめとする日本メーカーは、海外の有名なルアーを輸入して売るか、よく似た形のものを作って売っていたが、このころはやっとオリジナルのルアーが売れ出した時期か。

しかし中学生の僕には高いルアーは買えないし、買ってもなくしたら困るので使えない。

なので、コーモランという価格面で良心的なメーカーのものを、いくつか買ってきて投げていた。


何時間かして、足元まで引いてきたときになにか黒いものが反転していったような気がした。

もしかして?もしかして!

ドキドキしながら再度投げるが今度は何もついてこない。


もともと釣れない気で釣りをしているので、たいして気にもせずその後も釣りを続けていると、 今度はいきなり竿を持つ手に衝撃が伝わった。


反射的に合わせて、ジャンプする魚に見とれながらも最後は足元に引っこ抜いた。


それまで大きな魚を釣ったことのない僕は、足元でバタバタと暴れている30センチ強のブラックバスを眺めながら、 足も手も震えっぱなしだった。



柿之介:「釣れた、釣れたで〜」


友人は複雑な笑い方で「運のいいやつめ」と祝福してくれた。




その後、既に満足した僕は釣具見本市でもらったタコベイトのキーホルダー(壊れたのでばらした)を テキサスリグで投げて遊んでいたが、目の前で突如底から現れたブラックバスがひったくっていき、 初めてのブラックバス釣りにして2匹目も釣ってしまった。


友人の笑顔はさっきよりさらに複雑になっていた。



当時のタックルは、シングルハンドの硬いベイトロッドにゴールドストレーンの4号、 テキサスリグのシンカーは2分の1オンスと、今から見れば釣れる気のしない道具立て。

それでも釣れたのだから、たぶん魚が素直だったのだと思うが、友人の言うとおり、運がよかったというのは確かだろう。




(Phantom JCB602MLR, Phantom Magservo SS-15AC)






古い釣り

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